住宅用モーゲージを裏付けとするCDOは通常、期間十年のスワップ・レートを基準に金利が決められていた。
このレートは銀行間の資金の貸借に使われ、米国債十年物利回りに密接に連動している。
2005年には十年スワップ・レートは4.4パーセント前後と低く、CDOの最上位クラスの金利はこれにベイシス・ポイント(0〜0.25ポイント)上乗せした水準だった。
4.5パーセントから4.65パーセントだったわけだ。
サブプライム・モーゲージCDOのトリプルA格クラスを保有しているとしよう。
金利は5パーセントである。
いまでは、サブプライム・モーゲージのデフォルト率は10パーセントに向けて上昇しているので、信用損失に対する保護が急速に消えており、もはやトリプルA格が適切だとはいえなくなっている。
銀行や格付け会社はこの場合の適正な時価を評価する高度なモデルをもっているが、話を簡単にするには、サブプライム・モーゲージをいま借りるときに金利がどの程度かをみてみればいい(CDOの構造による信用損失への保護がなくなっていくので、サブプライム・モーゲージを保有しているのと変わらなくなっているからだ)。
低くても9.5パーセントであることが分かる。
いま、9.5パーセントの利回りを要求する投資家が、BSのファンドで起こったことは、これに似ている。
ファンドを運用していたラルフ・Sは、主にダブルA格かトリプルA格の高品質のCDOクラスを買ってきたし、デフォルトは起こっていないのだから、不良債権にはなっていないと抗議した。
しかし、損失が発生するのは、デフォルトが起こったときだけではない。
2005年と2006年に発行されたCDOは、米国債と変わらないほど安全だという見方に基づいて価格が設定された。
実際には、安全ではなかった。
かなりリスクの高い金融商品なのだ。
ところが、米国債とあまり変わらない利回りでしかないのだから、実際の価値は低下しており、デフォルトが増えるとともにさらに低下する。
信用関連商品に投資するヘッジ・ファンドがポジションの適切な時価評価を行っていないことを示す事実が多数ある。
デロイト・フィナンシャル・サービセズの詳細な調査によれば、資産評価とポートフォリオのストレス・テストを業界の最善の慣行(ベスト・プラクティス)に損したのである。
表面利率が5パーセントの債券にいくらを支払うかをみてみる。
答えは、額面百ドルに対して70ドルである。
5パーセントの金利しか支払わないCDOを額面どおりの百万ドルで購入していたとすると、30万ドルの損失をこうむっていることになる。
時価評価による損失は帳簿上の損失にすぎないという見方があるが、この見方は間違っている。
実際に損失が発生しているのだ。
700ドルの価値しかないものを1千ドルで購入したのであれば、300ドルをたしかにしたがって一貫して行っているファンドは半分にも満たない。
資産評価についてはファンド・マネジャーが完全な裁量権をもっているファンドも多い。
あきらかな利益相反が無視されているわけだ。
また、一部のヘッジ・ファンドは時価評価額を操作するために、他のファンドとの間で、ときには買い戻し条件をつけたうえで、有利な価格で資産を取引しているようだ。
このように資産評価がずさんだったり、ごまかされていたりすれば、実際のレバレッジが表面にはあらわれない形でかならず上昇し、後に相場が悪化したときに打撃が大きくなる。
2007年6月に起こったBS系ヘッジ・ファンドの崩壊は、金融機関とヘッジ・ファンド顧客の恐怖の均衡を示す好例にもなっている。
フィッチの調査を受けて金融機関が不満を語ったのは、この点に不安を感じているからかもしれない。
MはBS危機でとくに強硬な姿勢をとり、担保積み増しを要求したのだが、わずか数か月後に、このときの強硬姿勢が一因になった相場下落で、巨額の評価損を計上することになった。
金融機関はヘッジ・ファンド顧客との関係が密接になりすぎており、巨額の資金をリスクにさらしている。
評価損が発生するような事態の引き金を引かないようにし、危険なポジションを積み上げる動きを放置しようという誘惑はきわめて強い。
しかし、主要な資産クラスで相場が大きく反転したとき、隠れられる場所はない。
金融機関は遅かれ早かれヘッジ・ファンドの資産を差し押きえるしかなくなる。
とんでもない地獄への扉を開けるリスクがあるのだとしM・MとD・B・Rがはじめて企業買収に使ったジャンク債は、いまでは高利回り債と改名し、規模の大小を問わず、ほとんどすべての健全な企業にとって資金調達手段の主流になり、ごく普通の個人投資家にとってすら、標準的な金融商品になっている。
1989年から91年にかけての市場再編の後、債券発行市場で高利回り債の比率が上昇を続けており、発行される債券の平均信用力は低下を続けている。
驚くべきことに、信用力が低下を続けた時期に、投資家が要求する利回りは低下を続けてきた。
格付け会社のSP(S&P)によれば、過去15年間に、発行される全債券の平均格付けは、投資適格格付けでも堅実なAマイナス格から、ジャンク債まであと一歩のトリプルBマイナス格に下がってきた。
そのうえ、高格付けの発行体は金融セクターに集中している。
金融セクター以外の発行体のうち、投資適格格付けの発行体は39パーセント。
新聞の報道では、いま起こっている信用逼迫は、サブプライム問題だとされている。
だが問題ははるかに大きい。
サブプライム・モーゲージ関連がたしかに、危機にあるCDO市場のなかでとくに問題が深刻な部分なのだとしても、他のセクターでも信用危機は同じ程度の規模があるし、少なくとも同じ程度に深刻である。
セントしかない。
そして、きわめてリスクが高いトリプルC格からダブルCマイナス格の発行が3倍に増えている。
要するに、高利回り債はいまでは、市場の主流になっているのだ。
2000年にハイテク・バブルがはじけた後、高利回り債のデフォルト率は急激に上昇し、2002年には、長期平均の3パーセントを大きく上回る13パーセントに近づいた。
しかし、連邦準備制度理事会(FRB)が提供した流動性の洪水が効果をあらわすようになると、デフォルト率は急激に下がり、2006年には0.76パーセントにすぎなくなった。
これは1981年、ジャンク債がまだMの漠然としたアイデアにすぎなかったころ以降で最低の水準である。
2007年前半には、高利回り債のデフォルト率はさらに低下し、0.26パーセントになっている。
これに比例して、高利回り債の利回りスプレッド(米国債に対する利回りの上乗せ)が縮小してきた。
債券利回りの権威、ニューヨーク大学のエドワード・アルトマンによれば、2007年半ばの高利回り債利回りは、デフォルト率が年1パーセントにすぎず、デフォルトの際の回収率が50パーセントになる(つまり、発行した企業が倒産しても、額面の50パーセントが戻ってくる)と投資家が予想していることを意味するという。
要するに投資家は、市場の好調が長期にわたって続くと予想して、高利回り債を買っていたわけだ。
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